厚板の引張試験
金属厚板の引張試験は国際的に広く知られているISO 6892-1とASTM E 8に準拠して行われており、ISO 6892-1はまたヨーロッパの規格 (EN ISO 6892-1) と一致しており、従ってヨーロッパユニオン (例、ドイツのDIN EN ISO 6892-1)でも適用されています。このタイプの引張試験では試験片は厚板と試験片の厚さが出来るだけ同等になるように切り出されます。よって試験片断面積は大きくなり、通常試験システムは高容量のものが必要となってきます。荷重を受け変形する試験片の平行部長さはミーリングで作成します。厚みに手を加えずに注意深くミリングを行い試験片を滑らかにすることで、若干の変更が試験片に加えられますが、材料特性値にはほとんど影響を与えません。
2009年以降、 ISO 6892-1及びASTM E8 によってひずみ速度で試験スピードを制御する事が規定されました。 規格で規定されているひずみ速度制御の許容範囲(特にクローズドループひずみ速度制御)にmakroXtens及びレーザー伸び計でも十分に対応しています。
厚板の引張試験のソリューション
ツビツクローエルは、引張試験から特性値を決定するために、最大2500kNまでの幅広い標準およびカスタマイズされた試験システムを提供しています。これらの試験システムは、高い精度で規格に従って材料特性を決定でき、試験片が滑ったりスライドするのを防ぎます。
ほとんどのケースでは規格に沿ったひずみ測定を自動接触伸び計あるいは光学(非接触)で行います。ツビックローエルのマクロ伸び計は厚板試験では最適な伸び計です。メカニカルな構造による高分解能、精度を兼ね備えたmakroXtens は過酷な環境でもしっかり役割を果たします。強いメカニカル構造により、試験片が破断するまでの連続的なひずみを測定できます。したがって、面倒な試験片のマーキングや、破断後の試験片の手動測定を必要とせずに、破断時のひずみを自動的に決定できます。
レーザー伸び計は、厚板試験片の規格要件 (ISO 6892-1、ASTM E8、ISO 9513、および ASTM E83) を完全に満たし、試験片が破断するまでのひずみ測定のための当社の革新的なソリューションです。レーザー伸び計では、試験片へのマーキングは必要ありません;測定原理に基づいて、レーザー伸び計はレーザー光によって作成されたパターンをマーキングとして使用できます。”セルフマーキング”機能でオプティカルな評価を行っており、スケールやスケールの剥がれた状態でもマーキングを阻害する事はありません。
硬さ試験
厚板の硬さ試験は様々な方法で行われます。 その他のメソッドや規格の硬さ試験もある特定のアプリケーションでは行われています。 (例えば、the European standard EN 2002-7 エアロスペース); 表面積の大きな試験や非破壊試験では QEM メソッドが使われています。 (例えば、3MA method)、これは VDI Guideline VDI/VDE 2616-1 (金属材料の硬さ試験)に規定されています。
厚板の硬さ試験機
ツビックローエルの製品ポートフォリオでは全ての試験メッソドに対して硬さ試験機を用意しています。ツビックローエル硬さ試験機は全ての国際規格の要求を満たし、さらに国際規格に基づく校正も実施可能です。ツビックローエルはドイツの規格団体、DAkkSによって硬さ試験機の校正機関として認定を受けています。
硬さ試験の1つの側面はローリング後のシートメタルのアベレージグローバル硬さ値の検証及び測定です。ローリングは熱機械プロセスであり、シートメタルの厚さを設定するだけでなく、機械的特性も決定します。高荷重による硬さ試験は表面粗さの平均値を測定するために利用されます。最適なメソッドはブリンネルあるいはロックウェル方式です。厚板の場合、現場でオリジナルパーツに使用できるポータブル硬度計を使用することは珍しくありません。固定式硬度計を使用する場合、厚板からクーポンを機械加工して試験片として使用するか、クーポンから小さな試験片を機械加工して、必要に応じて硬度試験のためにさらに加工します。
硬さ試験のもう1つの側面はマイクロコンポーネント分野において結晶粒構造を硬さ試験で評価する事です。金属組織が非常に小さいため、極めて小さな力の硬さ試験機が使われます-一般的に言えば、金属組織成分のサイズに応じて押込み力が調整できるタイプの硬さ試験機を使用します。
厚板の落重試験/Pellini試験
落重試験は ASTM E208 及び SEP 1325 に記述されているように、材料の脆性亀裂の伝播しやすさ・しにくさと停止させる能力を評価し脆性破壊特性を調べるための試験です。 重りが両サイドで支持された試験片上に落下し、試験片に脆性亀裂を引き起こします。 この脆性亀裂はノッチ加工された溶接ビードから伝播していきます。 人工的に作られた亀裂スターター(ノッチ)によって引き起こされた脆性亀裂が試験片に伝播するのか、それとも亀裂が停止するのかを測定しています。 亀裂のフォーメーションや破断をマニュアルやオプティカルにて評価します。 亀裂が試験片両端まで伝播していればその試験片は破断したとみなします。 この試験はまた試験片の温度を変えても行います。
ペリーニ試験用の落重試験機には、エネルギーが 550 J と 1650 J の 2 つのサイズがあります。最大落下高さは 1.0 m または 1.3 m です。 落下重量は落下高さ調整機能により自動的に上昇します。ドロップエネルギーは自動で計算されます。試験部はインターロックにて機械的にも電気的にもプロテクトされています。従って、試験は全てのセーフティー機能を満たすまでは開始することが出来ません。オペレーションは重りのポジション、エネルギー、重り、速度をタッチスクリーンにて設定します。
厚板の破壊靭性試験
破壊靭性K1c試験は金属材料の特性値、特に飛行機の構造、発電所建設、さらには自動車エンジニアリングの安全上のアプリケーションとして重要視されています。破壊靭性特性値は予き裂を入れた試験片を用いて求められます。まず始めに試験片にノッチ加工を施し亀裂を入れ、その後所望の亀裂進展長さになるまで予亀裂を入れます。予亀裂の入った試験片を静的荷重を負荷し破断させます。破壊靱性K1cは荷重‐変位曲線と予亀裂の長さから求めます。
K1c測定の2段階試験はツビックローエルのバイブロフォア、その後ツビックローエルの材料試験機で効率良く行う事が可能です。試験片のき裂は機械的に作られたノッチに加えられた繰り返し荷重により進展していきます。バイブロフォアの周波数が高いため、決められた亀裂を生成するいわゆる過渡振動が非常に迅速に発生し、き裂形成に対する共振周波数の感度が高いため、再現性が高くなります。
最も頻繁に使用される試験片形状は、CT 試験片 (コンパクトテンション)と呼ばれます。試験片のホールに挿入されたピンを通して、引張りと曲げ荷重を加え試験を行います。
CT試験片に加え、SENB試験片(シングルエッジノッチベンディング)も使われます。曲げ試験片の負荷条件は CT 試験片よりも単純ですが、必要な試験片の体積は大幅に大きくなります。これはイラストを参照してください。